香港ポストコラム『法的観点からの販売方法』
- 2013年03月11日
- カテゴリ:column
法的観点からの販売方法
売り上げをあげるために企業は常にマーケットシェアの拡大を自力で、あるいは他力を借りて図っています。後者の場合、主に以下の4つの手段があります。①代理店方法②販売店方法③フランチャイズ④委託販売——。海外に進出したい場合や急成長を狙う場合には、代理店、販売店、フランチャイズは特に効果をあげます。4つの手段についてそれぞれの違いを紹介します。
⑴代理店方法
代理店とは、メーカーと顧客の間で契約を結ばせることを目的に、マーケティングや宣伝、顧客の拡大、顧客との交渉をすることなどをメーカーから委任されたものです。いわば架け橋の役です。法律上の代理店とは、代理人として本人と第三者の間に法律関係を築く権限を明示的あるいは暗示的に本人から委任されることを指します。代理店方式は主に無形の商品(保険、広告)の販売に適しているといえるでしょう。もちろん有形の商品(車や器械)を売る際にも代理店方式は使えますが、商品の在庫はエージェントではなく、ほとんどはメーカーが所有し、商品の所有権もメーカーが持ちます。そのためエージェントが手数料を手に入れることができるのは実際に販売されたときとなります。
代理店の特徴
権限によりメーカーの代わりに直接的に顧客と契約することができます。販売契約の効果(つまり商品あるいはサービス)はメーカーとお客に帰属します。代理店は契約に対して責任がありません。売掛金の回収などのリスクはメーカーが負います。エージェントの報酬はコミッション(手数料)です。
⑵販売店方法
この方法は代理店と異なり、まず販売店はメーカーから商品を購入し、(例えば4ドル)商品を最終のお客さんに再販売 (例えば5ドル)する方法です。代理店が得ることのできる利益はその差額分(1ドル)で、在庫のリスク/コストは販売店が負うことになります。例えばAppleの商品がこの方法によって販売されています。
販売店の特徴
メーカーから販売店が購入し、販売店から顧客がさらに購入するというように売買関係が2段階になっています。つまりメーカーと顧客との間に直接的なつながりはありません。売掛金のリスクは販売店が負い、販売店の報酬は再販売からの差額です。
代理店vs販売店
最終的に「商品を顧客に売る」ことを目的とする機能が似ているため、多くの人は代理店と販売店を混同しがちです。しかし法的には両者は区別されます。代理店は誰かの代理として、本人と顧客の間で直接的に契約を成立させます。それに対して販売店はただ商品を再販売するだけですので販売店と顧客間で契約が成立します。
⑶フランチャイズ
フランチャイズとは自分のすでに成功したビジネスモデルあるいはブランドをライセンスの形にして加盟者に売ることです。加盟者はフランチャイズを与える企業の指示に厳格的に従って商品/サービスを買い手に提供します。ファストフードやコンビニエンスストアなどがフランチャイズを利用して海外にも店舗を保有しています。フランチャイズはWIN—WINの関係です。加盟者はすでに成功しているシステムやブランドをすぐに使うことができ、少ないリスクで起業できます。企業側もコストを抑えてスピーディーに拡大することができます。
⑷委託販売
委託販売とはメーカーが自社の商品を商店やデパートに預けて、それらの商店に代わりに販売させる方法です。預けてからある程度の期間がたつと売れなかった商品はメーカーに戻され、利益はメーカーと商店でシェアします。小規模な販売や新商品や知名度が低い商品の販売に適しています。売れなかった場合のリスクをメーカーが負うことで試しに売りに出してもらいやすくなります。
結論
会社により、扱う商品はそれぞれ違います。どの方法を使うべきかは各々の扱っている商品の特性にあわせて決める必要があるでしょう。
(このシリーズは月1回掲載します)
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筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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