column:香港ポストコラム 『香港にある資産の相続手続き ②』

香港ポストコラム 『香港にある資産の相続手続き ②』

香港ポストコラム 『香港にある資産の相続手続き ②』

中小企業のための法務講座

香港にある資産の相続手続き②

 では実際に、香港に資産のある配偶者や香港法人の株主である社長がお亡くなりなった場合、どうしたらよいでしょうか。

 結論から述べますと、香港の弁護士に直接相談していただくのが一番かと思います。それでは身も蓋もありませんので、香港に資産のある方がお亡くなりになった場合に、考えるべきポイントを簡単に説明したいと思います。
probate procedure

①遺言の有無

 遺言があるかないかによって手続きの簡便さが異なります。ただ例え遺言があった場合でも、執行人の指定がなかったり、指定の格式でなかった場合は、より面倒な手続きになる場合があります。

②死亡地

 死亡地がどこであるかは、非常に重要です。香港や日本以外の第3か国でお亡くなりになった場合、当該国の弁護士による意見書もさらに必要になります。

③資産および負債内容

 預金、保険、株、香港法人、不動産、金庫などの資産や負債をすべて洗いだす必要があります。資産が15万香港ドル以下であれば簡易的な手続きが認められています。香港で働かれていた方の場合、忘れがちですが、MPFにも資産が貯まっているはずです。

④相続争いの有無

 香港の相続手続きでは、たとえ相続人全員が合意していたとしても(=争いがない)、香港の弁護士を通じ裁判所に相続手続きの申し立てをし、遺産管理状命令により、遺産管理人が責任を持って資産や負債を整理し、相続人に分配する、という法制度になります。

⑤家族関係の複雑さ

 被相続人が日本人の場合、戸籍謄本や改製原戸籍等から被相続人と相続人の関係を調査し意見書を作成します。私生児の有無、養子、成年後見制度を利用している場合は、より注意が必要です。

⑥準拠法の確定

 日本人が香港に資産を残してお亡くなりになった場合、相続準拠法を考える必要があります。本拠地(domicile)とは、一定の住所を置き、そこから離れても戻る意思を持っている場所の国が準拠法となり、その国の法律に従い財産を分配します。日本人の場合、特殊なケースを除いては、本拠地が日本になることが多いようです。 

 ただし、日本法で処理されると言っても、相続の手続きは、財産の所在地の法律で行いますので香港に資産がある場合、香港の裁判所への申し立てが必要になります。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介
アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能 www.andysolicitor.com info@andysolicitor.com

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