香港ポストコラム 『香港の民事訴訟③』
- 2014年12月29日
- カテゴリ:column
香港の民事訴訟③
訴訟へ進む前に考慮すべきこと
資産状況の調査
訴訟を起こす前に、相手の経済状況をきちんと調査するのは極めて重要である。回収できなかった場合、勝訴の判決は何の価値もない紙となる。回収を目的として訴えるのであれば、弁護士の責任として、事前に、清算や香港に資産価値のある財産の有無などの相手方の経済状況を調べないと業務過失を認定されるリスクがある。
時効
民事訴訟は限定された期間=時効期間内に起こさなければならない。時効条例(Limitation Ordinance)により、その期間は以下のように規定されている。
・契約(contract)…契約違反日から6年間
・不法行為(tort)…不正行為日あるいは不正行為による損害が初めて発生した日から6年間
・証書(deed)…違反日から12年間
・信託(trust)…詐欺による違反は時効なし
以上を考慮の上、民事訴訟を起こす場合、香港では、⑴弁護士に委任する、⑵国選弁護士に委任する(Legal Aid)…貧困などの条件あり、⑶当事者本人が行う の3つの方法がある。ただし、高等裁判所では、原告であれ、被告であれ、法人の場合は、必ず弁護士に委任する必要がある。
民事訴訟の流れ
民事訴訟の流れは以下のとおりである。
⒜起訴状の発行(issue of originating process)
⒝起訴状の送達(service of originating process)
⒞訴答書面(pleadings)
⒟情報開示と交換(discovery and exchange of documentary evidence)
⒠証人陳述交換(exchange of witness statement)
⒡裁判準備の決着(set down for trial)
⒢正式審理(trial)
⒣判決(judgment)
⒤執行(execution of judgment)
⒜から⒡までの間にも様々な中間手続(interlocutory proceedings)がある。例えば、書面弁論の変更、期限の延長、欠席や簡易判決の申請、相手方の書面弁論の取消、相手方の資産の凍結、原告に対する立担保請求などで、こうした手続はいわゆるミニ(衛星)裁判である。
(このシリーズは月1回掲載します)
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能www.andysolicitor.com
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