column:『香港上場申請の新しい規制』 香港ポストコラム

『香港上場申請の新しい規制』 香港ポストコラム

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上場申請の新しい規制

 香港SFCは、2012年12月12日に、半年の議論の結果、IPOスポンサーに関する規制改革および議論の結論を発表しました。IPO業界内で最も注目されたことは、IPOスポンサーに対しての刑事責任が問われること、および申請段階で「完成度が高い」目論見書のドラフトが要求されるようになったことです。

 また申請段階で、香港証券取引所のHPに目論見書が公表されることになり、これまでの香港でのIPOのやり方は大きく変更されました。


改革の背景

 一部のIPOスポンサーは、きちんとしたデューディリジェンスをせず、責任を果たしていない状況がありました。例えば、2012年に新規上場した中国繊維メーカーである洪良国際が、上場後わずか64日で香港史上初の強制上場廃止(撤回)を香港証券取引所に命じられました。その理由として、目論見書の内容に嘘が多く、不正会計が記載されていた疑いです。洪良国際のIPOスポンサーは罰金とともに永久にライセンスを廃止されました。

 また従来、目論見書や書類が中途半端で、完成度が低いまま香港取引所に提出し、10回以上の修正や質問の回答は珍しくありませんでした。こうしたやり方は、時間とコストは長引く原因となっていました。

 香港SFCと香港証券取引所は、これらの欠点を解決するために、申請の審査の手続きや流れの合理化を約束すると共に、上場ルールに関する解説や説明書を発行しました。これから、より能率的な上場プロセスを達成しながら、質が良い会社を上場させる意図があります。

今後のIPO申請

 今月、2013年10月1日からのIPO申請には、下記が要求されることになります。

⑴申請時点で、目論見書は必ず、十分に完成した内容である必要があり、3日間の事前チェックをパスした後、香港証券取引所のHPで公表する義務があります。

⑵今まで申請時点から申請終了までに提出すればよかった書類は、申請時点で完備しなければなりません。

⑶目論見書の申請版が香港証券取引所に十分完成していないと判断された場合、その申請は会社側とIPOスポンサー返却され、上場の申請は最低8週間、凍結(一時停止)されます。それとともに、返却された上場申請はIPOスポンサーと会社名も香港証券取引所のHPで公表されます。

⑷申請会社とIPOスポンサーが⑶の証券取引所の判断に不服がある場合、「加速的」なレビュー導入されます。

⑸香港SFCと香港証券取引所から上場に関するコメントや質問は、合理化されます。

⑹IPOスポンサーに関するルール、規制、承諾や声明も今回の改革と合わせて、書き直されます。

一時的な猶予

 先述の改革はあまりにIPO業界に大きな衝撃を与え、特に目論見書の申請版の返却や公表はIPO業界の強い反発がありました。香港証券取引所の要請で、香港SFCは2013年10月1日から2014年3月31日までの期間は、目論見書の申請版を香港証券取引所のHPへの公表義務を一時猶予することに同意しました。よって、猶予期間の上場返却情報、該当会社名とIPOスポンサーの身分は香港取引所のHPで公開されません。しかし、香港SFCによると、その猶予期間は2014年3月31日に終わり、4月1日から、必ず、目論見書申請版の公表と準備不足の理由で申請返却された申請に関わる会社名とIPOスポンサーの身分を改革通り公表するとしています。

これからの発展

 香港SFCはIPOスポンサーの規制を厳しくすると同時に、IPO申請の許可手続きを効率化することを業界と約束しました。これからの発展は言うまでもなく、申請提出前の作業量は大幅に増えることになります。公表でき、質が高い目論見書のドラフトを完成しなければならないからです。しかし、長期的にみれば、質が低い、中途半端な状態でのIPO申請は途絶える方向になるでしょう。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG

弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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