コラム:香港ポストコラム 『香港の偽法律事務所』

香港ポストコラム 『香港の偽法律事務所』

香港ポストコラム 『香港の偽法律事務所』

中小企業のための法務講座

香港の偽法律事務所

 今年の5月、香港で偽の法律事務所に、約88万香港ドルをだまされ警察に通報した事件がありました。偽疑惑の法律事務所「林李法律事務所」(Lam, Fung & Lee Solicitors)は、事務所のホームページによると金鐘以外に屯門、葵涌と沙田にもオフィスが設置されていることになっており、不動産、破産、遺産相続などの法律アドバイスを提供できるとうたっております。しかし、新聞記者によると、金鐘の事務所には何度行っても誰もいず、他のオフィス住所はすべて偽住所でした。そもそも香港では、法律事務所や弁護士は香港弁護士会(The Law Society of Hong Kong)に登録しなければなりませんが、香港弁護士会の記録によると林李法律事務所もその事務所パートナーも登録されていませんでした。

 HPの中国語バージョンと英語バージョンの情報が一致しておらず、パートナーの写真はこのような間違いが少なくありませんでした。

 約88万香港ドルをだまされた被害者は仲介会社に住宅ローン低利貸借を唆され、上記の偽法律事務所まで連れていかれ、住宅ローンの文書にサインし、その法律事務所の代表取締役と自称していた人に88万1000香港ドルの保証金を渡しました。


法律事務所の見分け方

 日本でも同様に香港でも、弁護士でない者が弁護士と名乗り報酬を得る目的で法律事件に関して代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を取り扱うことができないとされています。香港では、必ず、すべての法律事務所と弁護士が弁護士協会に登録しなければ執務できないことになっています。これは外国法法律事務所と香港法以外の弁護士も同様です。香港で執務するに当たり香港弁護士協会に登録せずに弁護士と自称する場合は詐欺罪を犯すことになり、最高で14年間収監される可能性があります。登録せずに口頭で弁護士と名乗ったり、名刺を配ったり、ドアに[法律事務所]と看板を掲げただけで違反となります。

 香港にある資産の相続手続きはプロベートと云う裁判所手続きが必要となりますが、不紛争のプロベートルールにより、金銭のやり取りがあるかないかを問わず、エージェントを通じた申請をしてはいけない。またあなたのアドバイザーとして随行してはいけない。としています。

 以下の弁護士協会のサイトで確認の上、弁護士に依頼した方が安全でしょう。

・香港弁護士協会の香港法弁護士の検索ができるサイトhttps://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/mem_withcert.asp

・香港において登録されている外国法法律事務所リストhttps://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/mem_foreign_firm.asp

香港において登録している外国法弁護士リストhttps://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/

相続の弁護士専用手続きカウンター

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介
アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤 務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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