コラム:中小企業のための法務講座『香港における労働法③』

中小企業のための法務講座『香港における労働法③』

中小企業のための法務講座『香港における労働法③』

中小企業のための法務講座

香港における労働法③

6 香港における解雇

⒈予告あるいは解除予告手当による解雇

雇用主が従業員を解雇する場合には、就業規則や雇用契約書に則り、契約の通知期間通りで解雇できる。相手方に対し適切な事前通知期間または事前通知に代わる金銭の支払いが必要となる。具体的には下表の通りである。

もし特に就業規則や雇用契約書に規定がない場合は、試用期間後であれば、1カ月前の通知、または1カ月分の給与を支払うことで解雇できる。正確には、契約解除予告日直前の12カ月間に労働者が得た平均日給/月給×日数/月数で計算した解除予告手当の支払いが必要となる。

⒉即時解雇

従業員が以下の状況にある場合には、雇用主は、その従業員を即時解雇することができる。また、その基準となる判断については次のような要素が必要である。

⑴適法かつ合理的な業務指示に意図的に従わない場合
⑵不正行為を行った場合
⑶詐欺・不誠実なことによる有罪の時
⑷常に業務怠惰な場合

以上の様に、法律上で具体的な定義がされておらず、非常に曖昧で幅が広い定義のため、これのみを頼りに即時解雇をすると、不法解雇と差別条例違反とみなされ、訴えられる可能性もありえる。従業員は無料で労務局へ訴えることができるため、即時解雇をされる場合には、慎重な検討が必要となる。

また、従業員が以下の状況にあたる場合は、雇用契約を事前通知(または事前通知に代わる支払い)なしに辞職することができる。

⑴合理的に身体に暴力あるいは疾病の危害を受ける恐れがある場合
⑵従業員が雇用主により虐待を受けている場合
⑶5年以上就業している従業員で、登録医師、または登録のある中国医師から当該従業員の役務が生涯不適切であると判断された場合

なお、従業員がストライキに参加することは権利として保障されており、雇用主が雇用契約を解除するための適法な理由とはならないことに注意が必要である。

⒊雇用契約解除時の支払金

雇用主が雇用契約を解除する場合、あるいは、契約期間満了時には、雇用契約書や就業規則に基づき、以下の様な解雇補償を支払う。

・すべての未払賃金
・解雇予告手当て(もしある場合)
・未消化の年次休暇の買い取り
・ダブルペイ
・長期服務金あるいは解雇保証金(もしあれば)
・その他

なお、解雇補償を遅くとも雇用契約解除日あるいは契約期間満了日より7日以内に解雇補償を支払わなければならない。雇用主が意図的、かつ、正当な理由なく従業員に適時に解雇補償を支払わず有罪となった場合、最高35万香港ドルの罰金および3年の禁固刑となる。

⒋解雇が禁止される従業員

解雇禁止の対象となる従業員は上表の通りである。
雇用主が上記の各類型の従業員の解雇を行った場合、最高10万香港ドルの罰金対象となる。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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