コラム:香港における詐欺

香港における詐欺

香港における詐欺

香港における詐欺

 日本でもよくお年寄りが電話詐欺にあい2000万円送金やら、コンビニの店員がそれを食い止められて表彰などのニュースを見かけられたことがあると思います。私自身、『衛生署からの通知』やら『イミグレーション・消費委員会からの連絡』などの機械音の電話を受けたことが何度もあります。皆さんはどうですか。『自分はそんな詐欺にはひっかかる訳がない。』と思われている方が多いかもしれません。
 詐欺には様々な手法がありますが、香港では、左の統計のように電話詐欺や投資詐欺が多く、年々増加しています。相手に恋愛感情を抱かせて、現金を騙し取る詐欺の手口を『ロマンス詐欺』と言います。SNS、婚活サイトやFacebookなどを通じて出会い、数ヶ月かけて信頼関係を築いていきます。ある程度の信頼関係を構築した段階で、実際に直接会おうとすると様々な出来事や理由をつけて一時的な立替を希望したり、仮想通貨などの投資に誘う手口です。詐欺は、劇場型のように、まるで演劇のように複数の登場人物が登場し、騙しの電話やメールがあり送金、発覚すると連絡が途絶えます。それらの詐欺被害の金銭は、その後、様々な国へ送金を繰り返し資金洗浄されていき、まず追いかけることが出来ません。
 実際に、私は今まで何件も日系企業が詐欺にあい、ご相談や裁判を受けております。つまり駐在員、或いは、中小企業の管理層のあなたも人ごとではありませんよ。特に香港は、海外企業との貿易取引(代金決済実行業務)を日常的に行っているためにターゲットになりやすいのでしょう。香港法人の駐在員や会計担当者は特に注意が必要です。
 
詐欺のよくある手口:
−会社や通信会社をハックしたかのような取引先とのやり取りを知った上、言葉遣いも真似たメール。
−社長から駐在員や会計担当者へ送金指示。しかも出張中などで直接連絡を取りにくい状況を分かっていたような節もある。
−メールアドレスは、今まで連絡していた担当者とほぼ同じ。 nと mの違いなどで通常そこまで毎回メールアドレスを確認することはないので、後になって気がつく。
−表示される電話番号は本社?のこともある。(つまり表示番号を自由に設定出来る?)
−電話も活用し、日本人が電話をかけてくる。
−更に期限を設定し、通常より早く送金すると早期割引の適用などと焦らせる。

日系企業が取るべき対策:
A 予防策

詐欺を見破るのは非常に難しいため、今までと異なる口座への送金が発生した際には、メールのみではなく、電話などで別途担当者に問い合わせを原則とする。或いは、一定額以上の送金の際のルール作りにより詐欺を避けることが出来るだろう。

B  対応策
1 銀行への連絡

詐欺が発覚した後すぐ、送金元や送金先銀行へ連絡し、まだ着金済みでないのであれば、詐欺口座への送金を食い止めてもらう。この段階で食い止められたケースもある。

2 警察への通報

もし着金済みである場合は、すぐさま警察へ通報する。香港の銀行口座である場合には、香港警察999が適当であり、関連する証拠書類を提出すると対象銀行口座を凍結してくれる。もし詐欺被害金がまだ詐欺口座に残っている場合には、民事裁判を起こし、勝訴判決や欠席判決により返金を受けることも可能だが、そのためにも一刻も早く凍結によりお金を確保しておくことが重要である。一刻を争う事態であり、すぐに詐欺に気が付き、動いた場合は、被害を最小限に食い止めることができるかもしれない。

3 弁護士に相談をする

 詐欺の手口は複雑化、巧妙化しており、一度金銭を送金してしまうと取り戻すことは非常に難しくなる。そのため被害に合わないようにすることが重要なポイントとなる。詐欺師に送金をする前に、少しでも疑わしいところがあれば、自分のみで判断するのではなく、弁護士に相談するべきである。投資詐欺に関しては、最低限、金融保険ライセンスがあるかどうか。香港法人としてきちんと登記、営業許可書があるかどうかなど様々なポイントから事前に調査することができる。
 万が一、送金してしまった場合は、送金先法人を調べ、相手法人を香港において民事裁判で訴えることになる。その場合は、通常、弁護士でなければできないだろう。特に被害額が大きい場合は、高等裁判所High Courtでの裁判が必要となり私のような事務弁護士ソリスターのみならず、法廷弁護士バリスタ-も雇う必要がある。通常、口座保有会社は、犯行グループと同一人物(会社)ではないため、相手がどういう対応をしてくるのかは不明である。ただ、私が経験したケースでは、中国人で農村らしき住所の人が多く、よく分からないまま名義だけ貸しているケースが多いようである。その場合は、こちらが訴えた時に、顔を出してくることはない。ただしその場合でも、詐欺を法的に証明する必要があり、欠席判決を取るためにもかなりの手間がかかる。

詐欺事件総計数字 出典:https://www.police.gov.hk/ppp_en/09_statistics/csd.html
 
詐欺の種類別前年同期比(9月)
出典:https://www.adcc.gov.hk/en-hk/statistic.html

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