コラム:香港ポストコラム 香港における担保

香港ポストコラム 香港における担保

香港ポストコラム 香港における担保

中小企業のための法務講座

香港における担保

担保とは?

 皆さん恐らく、担保というものが何か、何となく分かるでしょう。法律上では、担保とは、借手(あるいは負債者)が借金(負債)の返済を可能にさせるために自分の資産を担保品として差出し、債権者に対してその返済義務を果たすための保証です。返済が不可能な時、債権者は賠償として直接担保品を処分することができます。法人の場合は、清算、個人の場合は、個人破産があったとしてもその権利は、全く影響されることがありません。つまり、他の一般債権者より該当担保品に優先的な権利があることになります。

担保の種類

 大きく、2種類に分けられます。

個人担保(personal security)…保証人(guarantor)は、契約上、債権者へ負債者が負っている債務から生じる責任を取ります。簡単に言うと、負債者が返済不可能な場合、返済の責任は保証人が取ります。例えば、サプライヤーが新規法人と取引する前に、その法人の株主や取締役に個人保証を求めたりすることです。

物的担保(real security)…負債人、あるいは、第三者からの資産担保のことです。担保権者は、その担保品に所有権を主張する権利があります。

物的担保の種類

 おおむね、下記の4種類に分けられ、下にいけばいくほど効力があります。

⑴Pledge (質権)

 目的物を留置し、担保権者はそれを所持します。例えば、ギャンブルの時に自分の時計を質屋に預けたり、企業がリスクの高い投資を行う際、自分の株権を先方に預けることがこれに当たります。

⑵Contractual Lien(契約書の先取特権)

 債権者は負債者の資産に対して、所持と留置をする権利があります。例えば、車の修理を請け負った時に、支払いまで、車を押さえておく権利があります。

 上記二つの担保は、法律上では物足りません。債権者を悩ませる効果はあるものも、人の資産をただ押さえる(所持)だけで、所有権限は発生しないからです。次の二つの担保は法律上、強力な権利があり、しかも資産の所持は要りません。

⑶Floating Charge(浮動担保)

 変動する不特定の資産に対して設定するものですが、債権者の事業をまひさせることなく担保を設定できます。

 Floating Chargeを説明する前に、その発想を説明しましょう。19世紀の英国は、fixed chargeという概念しかありませんでした。当時、担保付けられた資産は、確かめられ、明確な資産である必要がありました。それ故、日常、流動性がある在庫商品や商品の販売により将来貰える売掛金はfixed charge の対象になれませんでした。しかし、英国の法廷はそれらの流動性がある資産に担保を付けることを承認し始めました。返済されない時などに、そのFloating ChargeをFixed Chargeに変更させるメカニズムによって、ビジネスを大きく発展させることができました。貸す側にとっては、より担保が取れるし、借り手にとっては、事業をまひさせることなく担保を提供することができます。このウィンウィンの仕組みは、近代法律の発展の中で天才的な発想と言われています。

⑷Fixed Charge(固定担保)

 特定の資産(機械、工場や不動産)に対して設定され、担保提供者は、当該資産は自由に処分できなくなります。しかも、債権者に保険をかけることを求められることが多いのが現状です。Fixed Chargeを確保できた債権者は、当該資産は負債人の清算に影響されないため、法律上で一番優位な状況と言えます。唯一のリスクは、処分する資産が、元々の負債額に足りない場合のみです。その場合、残りの負債は、他の一般債権者と競わなければなりません。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介
アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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