コラム:中小企業のための法務講座『香港におけるリストラ②』

中小企業のための法務講座『香港におけるリストラ②』

中小企業のための法務講座『香港におけるリストラ②』

中小企業のための法務講座

減給に関する法律の注意点:
 減給の原則として、減給を実施する前に、必ず事前にスタッフの同意を貰う必要があります。スタッフから事前に同意を貰っていない場合は、一方である会社側の勝手な減給は雇用条例の『時間通り給料を支払う。』という規定に違反することとなります。片方による一方的な減給分は、法律上では未払い給料と同じこととなり、法律により利息も発生することとなります。更に、『雇用条例』により、1ヶ月以上時間通りに給料を支払わないと従業員は雇用契約を会社に中止されたとみなすことができます。つまり、リストラ通知料と他のリストラ賠償を請求する権利が発生することになります。

減給に関する実務:
- いきなりではなく早めに計画と準備をすること。
- スタッフとの会話や説明の時に、強引で交渉の余地なしという態度を控える。
- スタッフのバックグランドにも関心を示す。スタッフ本人のみならず、扶養家族がいる場合は特に。
- 時間をかけて意見を聞く。
- 給料以外の福利厚生からまずは検討する。残業を減らし、最後に給料に着手する。
- 特に被害を受けるスタッフを先に見分ける(幼い子どもを養う人や受託ローンの負担がある人)。
- 見本として一般従業員より先にマネージメント層を、一般社員より大幅に減給する。
- 前の給料に戻すように、2,3ヶ月おきに検討する約束をする。
- 最終的にリストラとなってしまった場合の賠償のための計算は、減給前の基準で計算することを約束する。
- 書面にして両者で署名する。

無給休暇に関する法律の注意点
 雇用条例により、無給休暇が仕事停止(停工)の定義に当てはまる場合は、リストラ代の支払い義務が発生する。

 『仕事停止』とは。
 連続4週間仕事が与えられず、しかも給料が支払われない日数が該当機関の普通の勤務日数の半分を超える時、或いは、連続26週間仕事が与えられず、しかも給料が支払われない日数が該当機関の普通の勤務日数の3分の1を超えた時。のことです。
 もし該当スタッフが連続24ヶ月雇われていた場合は、リストラ代を支払う義務が発生することになります。

リストラ
 実務上では、先述の減給の態度と同じく、誠意且つ正直さと強引ではない態度で進めるのが良いでしょう。

リストラに関する法律の注意点
 リストラの基準は経営状況が悪いのが明らかであり、公平と客観的に見えることが重要で、決して差別や懲罰的な要素を感じさせないように特に気をつけないといけません。香港には1996年に性差別条例が施行されており、セクシャル・ハラスメントやマタニティ・ハラスメントを含む性的差別が禁止されています。例えば、女子社員だけの解雇(性別差別)、病欠をより取るスタッフだけ解雇(障害者差別)、シングルマザーや幼い子どもがいるスタッフの解雇(家庭差別)やある人種だけの解雇(人種差別)などに考慮が必要です。

リストラ時に発生したトラブル例
 先に述べた様に、法律に則り解雇を実施した場合は、大きなトラブルとなることは少ないとは思いますが、私の様な弁護士に相談にくるケースは、労務裁判を起こされた雇用主や刑事事件なども絡むなどの複雑なケースが多々あります。スタッフが労務裁判を起こすのは香港の法制度上、ほとんど費用がかからないため起こしやすい状況があります。そのために会社としては、不要なトラブルを避けるために事前によく準備の上、実際の行動を起こすほうが安全です。
 ある日系企業は、スタッフが刑事犯罪で容疑者となったケースでは、会社側の同情もあり、厳格な態度を最初はとっていなかったために労務裁判を起こされるスキを与えてしまいました。その一方、猛烈な反発が予想されたので、事前に、ご相談頂き、よく準備をした上で弁護士立会いの元、解雇したところ、トラブルとならずにすんなり進んだケースもあります。ケースバイケースではありますが、会社としてきちんと法律を遵守し、文書化しておくことが無用なトラブルを防ぐ第一歩となります。具体的にお困りの会社様がございましたら、初期段階からご相談下さい。

アンディチェン

ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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