コラム:香港ポストコラム 『新会社法:続き-資本維持の原則(Doctrine of capital maintenance)に関する規制』

香港ポストコラム 『新会社法:続き-資本維持の原則(Doctrine of capital maintenance)に関する規制』

香港ポストコラム 『新会社法:続き-資本維持の原則(Doctrine of capital maintenance)に関する規制』


新会社法:続き

資本維持の原則(Doctrine of capital maintenance)に関する規制
中小企業のための法務講座


資本維持の原則とは?

 資本維持の原則とは、一般的には、株主が出資した資本金が清算時に残っている場合を除き、通常、株主への返還は禁止されるということである。この原則の目的は、債権者を守るためである。ある会社とビジネスをする場合、少なくともその会社の債務は清算時に会社の資本金で、充当されると認識されているため、コモンローの角度から見ると、資本金を違法に返還するとその返還は無効となる。

 下記の4つは、コモンローの資本維持原則により、性質的に資本金返還と変わらないため特に厳しい規制がある。

⑴減資(以下「減資」〈Reduction of capital〉)
⑵資本金での株の買い戻し(以下「買い戻し」〈Buyback〉)
⑶資本金での株購入のための財政援助(以下「財政援助」〈Financial Assistance〉)
⑷利益以外(つまり資本金で)の金で、株主に配当や会社資産などを配る(以下「資産の分配」〈Distribution of assets〉)

新会社法

新会社法の第5部の要旨

—減資、買い戻し、財政援助の可否は、全て統一されたキャッシュフローに基づいた支払能力テスト(solvency test)による。

—裁判所を通さず、代わりに支払い能力テストに基づいた減資手続きの導入
—支払能力テストに基づき、全ての会社は買い戻しすることが出来る
—支払能力テストと特別手続きをパスすれば、上場、非上場を問わず全ての種類の会社へ財政援助をすることが出来る

支払能力テストにパスするためには?

 減資、買い戻し或いは、財政援助などの該当取引が行われた直後に、該当会社が債務返済することが出来ない見込みが無く、かつ、以下の何れの条件の1つを満たす必要がある。

①これから12カ月以内に清算するつもりがある場合、清算手続き日から12カ月の間の債務を全額返済することが出来る、あるいは
②清算するつもりがなかった場合、該当取引日から12カ月間の債務をすぐ支払うことが出来る。

 支払能力テストをパスするためには、

減資の場合…取締役全員
買い戻しの場合…取締役全員
財政援助の場合…取締役の過半数が、支払能力がある旨の確認書(solvency statement)にサインしなければならない。新会社法では、監査レポートの提出が必要なくなった。これは会社の「支払能力」は、やはり取締役員が一番詳しいとの政府専門家の判断であり、その責任も取締役に負わせるべきと判断した。

裁判所以外の特別な減資手続き

 今まで、減資は必ず裁判所の許可がないとできず、ハードルが高いものであったが、新会社で、特別な手続きが導入された。以下はその簡単な紹介である。

⑴取締役全員は支払能力がある確認書にサインすること
⑵株主会で特別決議を得る(つまり75%の同意)
⑶減資に関する情報を官報と新聞紙に載せること+確認書を登記すること
⑷債権者或いは、反対する株主は特別決議日から5週間以内に、裁判所に該当特別決議の取り消しを要求する権利がある(つまり、5週間を待つ必要がある)
⑸会社は先述の5週間後、必ず特別な用紙で該当反対がないこと或いは、反対されても裁判所は該当特別決議を認定することを申告する。

第6章;分配(Distribution)
 新会社では、分配に関する重大な改正がなく、株主への配当などの分配は、必ず純利益から出すと理解しても結構である。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介
アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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