コラム:香港における相続手続き②

香港における相続手続き②

香港における相続手続き②

中小企業のための法務講座

B 本拠地(Domicile)
相続手続きを始める前に、故人の本拠地(Domicile)がどこかを考える必要があります。香港のように英米法の国では複数の国籍を持つ人が多く、故人のドミサイルがどこかは、仕事、居住実態、家族など様々な要素から検討する必要があります。

C どこでお亡くなりになったのか。
 香港、日本或いは他の外国でお亡くなりになったのか。により必要な書類は異なります。 本拠地を日本とした場合には、日本の法律も絡みます。私が依頼を受けた場合は、香港の裁判所で求められる内容と細かな形式に基づいた日本法の意見書を作成し、日本法の弁護士に内容を確認してもらい公証してもらいます。香港のプロベート裁判所は、かなり形式に細かく、担当者によっては毎回異なる質問や補正が求められたりします。香港にとって外国人である日本人の相続手続きに慣れていない弁護士だと度々やり直しさせられその度に公証費用が発生してもおかしくありません。 日本人で死亡地が日本や香港以外の場合は、全ての場所が異なるために更に相続手続きが難しくなります。

D 相続税
 2006年2月11日以降の死亡であれば香港の相続税は必要ありません。もちろん日本居住者や日本の財産(*詳細は表を参照)は、日本で相続税が発生します 。 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告納税が義務付けられており、遅れると延滞税や加算税まで上乗せして支払う必要があります。全世界に資産がある資産家の方は、相続税の計算のためにも各国の資産を確認する必要があります。 銀行や証券会社は、守秘義務のために、名義人以外の例え相続人からの問い合わせであってもなかなか答えてくれません。その場合は、香港の代理弁護士として香港の相続資産の調査や手続きに関してはお任せください。相続税に関しては、日本の税理士中でも、海外相続の経験がある税理士に確認された方が良く、必要があればご紹介致します。
(国税庁HPにより抜粋)

相続税表

上記表中、■の区分に該当する受贈者が贈与により取得した財産については、国内財産及び国外財産にかかわらず全て課税対象になります (ただし、上記の表の※1の区分に該当する受贈者が一定の場合に該当する場合(注3)は、国内財産のみが課税対象となります。)。
 □ の区分に該当する受贈者が贈与により取得した財産については、国内財産のみが課税対象になります。

E 相続財産内容 

 故人が香港で所有していた預金、法人株式、証券、不動産など一切の資産は、死亡時点で何れも凍結され、香港裁判所でのプロベート手続き完了後、遺産管理状命令書(Letter of administration)もしくは遺言の検認(Grant of probate) がなければ動かせません。こうした日本との違いを知らない日本人の相続人が、日本と同様に考えられ、遺産分割協議書を携えられて香港の銀行まで向かわれるケースがあるようです。しかしながら例え遺産分割協議書や戸籍謄本を翻訳していたとしてもこれらは認められず『香港法の弁護士を探して下さい。』と言われてしまうのが現状です。香港では、日本人に限らず必ずプロベートの手続きを経たのちしか資産は動かせません。尚、亡くなられた後、法的な手続きを取らずに勝手に資産を移すと、罰金及び禁固刑もありえますのでご注意下さい。
 こうして 相続人から当事務所にご依頼を頂きますと、香港にある資産と負債をまずは確定させます。 事前に故人からどこに資産や負債があるか聞いていないと、そもそもどの金融機関にいくらあるのかがはっきりしないというケースも少なくありません。最近は、エコのために郵送が少なくなっていると尚更気が付かないケースもありそうです。相続人からの『○○にあるかも。』という不確かな情報を頼りに、1件1件確認していく必要があり、金融機関によっても必要な書類が異なるため手間と時間がかかります。 忘れがちですが、香港で働かれていた方の場合は、MPFや翌年分の予想税金分にも資産が貯まっています。もし銀行の金庫も保有している場合は、政府の役人と弁護士立会の元、開きますので更に手間暇がかかります。この手間は、金庫 の安全性と引き換えですので仕方がないですね。

アンディチェン

ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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