コラム:中小企業のための法務講座『化粧品の規制』

中小企業のための法務講座『化粧品の規制』

中小企業のための法務講座『化粧品の規制』

中小企業のための法務講座

化粧品の規制

はじめに
化粧品の販売は香港において非常に大きなビジネスです。化粧品業界に努める何万人もの従業員の生活や香港の観光業界を支える大きな経済効果を有しています。しかし、化粧品を巡るトラブルや苦情の件数は毎年増加しているため、規制すべきという被害者の声も高まっています。

香港における化粧品に対する規制の現状
香港には世界の化粧品大国と異なり、業界向けの特別な規制や法律はありません。安全標準、製造者・供給者・販売者の管理、製造のプロセス(例えば、人間テスト、動物テスト等)についての規制、化粧品のラベル・包装・保存方法・情報公開(例えば、成分、製造日付、使用期限等)・テストの手法・登録・広告、化粧品効果についての陳述の証明などのすべてについて規制や法律が設けられていないのが現状です。
ただし、不良品や安全性の低い化粧品は販売が禁止されています。

なぜ規制がないのか
香港の化粧品の多くはアメリカ、ヨーロッパ、日本から輸入されたもので、香港で製造された化粧品はほとんどありません。香港政府は化粧品を他の商品と変わらない“一般消費品”と捉えています。しかも、それらの輸入品はすでにアメリカ、EU、日本などの化粧品先進国の規制によって管理されており、香港でさらに規制を課す必要性は乏しいと考えられています。また、化粧品業界からの反対の声が強いことも大きな理由です。化粧品業界は香港経済における大きな業界の一つであるため政治への影響も大きいのです。

消費品安全条例
 香港では化粧品は“一般消費(商品)品”とみなされているので消費品安全条例によって管理されています。 そのため商品の製造者、輸入者および供給者は必ず商品の“一般安全性”を確保しなければなりません。一般安全性とは合理的な安全度を満たすことを言い、以下がその指標となります。
Ñ 1、商品を紹介、販売促進、売込みの手段/目的
Ñ 2、商品について採用するラベル、標記あるいは商品の使用、保存に関する説明/警告の有無
Ñ 3、該当商品が検定されたかどうか
Ñ 4、該当商品をよりもっと安全な商品として使う方法
一般的には、海外或は国際的な安全標準/規制を満たす場合(例えば中国、アメリカ、EU、オーストラリア、日本など)には、その商品は<消費品安全条例>の要求も満たしていると思われる。

化粧品安全性の取締機関
香港において、<消費品安全条例>を実行し化粧品の安全性を管理しているのは香港税関(香港海関)です。香港税関が行っている化粧品の管理は以下の通りです。
Ñ 1、化粧品の苦情を受け、調査を行う
Ñ 2、化粧品販売店を見回り、安全性の低い化粧品(例えば、海外で報道されている不良品など)を販売している店がないかどうかチェックしている。
Ñ 3、店で販売されている化粧品を購入し、そのサンプルについて香港政府の実験所で検査を行う。
Ñ 4、安全性の低い化粧品のリスクについて海外の情報を収集する。
Ñ 5、<消費品安全条例>に違反する化粧品について、販売停止と商品の回収を販売先に命じる。

また、香港税関以外にも“香港消費者委員会”という半官半民の化粧品の安全性を管理している機関があります。“香港消費者委員会”の活動は以下のようなものです。
Ñ 1、消費者の苦情や相談の窓口となる。
Ñ 2、調査を行い、店で販売されている化粧品を購入し、サンプルを香港政府の実験所に渡して安全性の検査を行う。
Ñ 3、安全性の低い化粧品の海外情報を収集する。
“香港消費者委員会”は政府と異なり、大きな権力を有しているわけではないが、安全性の低い化粧品を販売していた企業の名前を公開することができます。これは、多くの企業に対しての抑止力となるものでしょう。

<消費品安全条例>に違反する場合の罰則
初回は、最高10万ドルの罰金又は1年の懲役、2回目以降は、最高50万ドルの罰金又は2年の懲役にあたります。

おわりに
現在、特に化粧品業界に対しての規制を定めた法律がないため、被害者が企業に対して責任を追及することが非常に難しいものとなっています。例えば、使用期限が過ぎた化粧品を使用したために肌にトラブルが起きた場合、企業にその責任を追及するためには使用期限を過ぎた化粧品の使用と自身の肌トラブルとの因果関係を証明しなければなりません。この証明は非常に難しいものです。
つまり、香港での美容ビジネスは、日本ほど規制が厳しくないため、よりチャンスがあると考えることもできるかもしれません。

アンディチェン

ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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