コラム:Privity of contract (契約関係)

Privity of contract (契約関係)

Privity of contract (契約関係)


Privity of contract (契約関係)

香港は契約文化のため、契約書に署名する前に必ず顧問弁護士に確認してもらうべきである

 

  中国本土とビジネスをするとき、誰と契約すべきか考えたことがあるだろうか。特に工場は本土にあるが、出資者が香港の会社である場合、どちらと契約すべきだろうか。

 ある日本のサプライヤーはこの数年間ずっと中国の工場に品物を納品していた。この工場の出資者は香港会社であり、支払いは今までずっと香港の会社から支払われていた。しかし最近、香港会社からの支払いが滞り、もちろん本土の工場からも支払いはされない状況となった。納品契約書を見てみると日系サプライヤーと中国工場しか表記されていない。このような場合、香港の会社の契約違反を訴えることができるだろうか。

残念ながら、答えは否である。法律の原理(legal doctrine=注1)の契約関係(privity of contract)により、日系サプライヤーが香港会社を訴えることはできなくなる。

 

契約関係の原理(privity of contract)とは 

  契約関係の原理には2つの特徴がある。一般のルールとして、契約者でない者は契約によって与えられた権利を施行できない。同様に、契約者でない者は契約によって生じた責任を負わない。

【例1】 AとBは売買契約をした。契約により、Aは200トンの米をBに納品する義務を負ったが、AはBに納品できなかった。このとき契約関係の原理により、第三者CはAの契約違反に基づいてAに対して損害賠償請求をすることはできない(第三者が権利を主張できない)。

【例2】 例1と同じ契約の場合、AはBに納品したが、Bが支払いをしなかった。このとき契約関係の原理により、AはBの契約違反についての損害賠償請求を第三者Cにすることはできない。今回このコラムのテーマを選んだのも、多くの人は、BとCの取締役が同じであった場合、Cにも請求できると錯覚してしまいがちであるからである(第三者は責任を問われない)。

契約関係の原理から発生する問題

契約関係の原理は鉄則とはいえ、その原理を厳守すると多くの場合、契約当事者の考えとすれ違い、不公平な結果となりがちである。

例えば、AB間でAがCにお金を払うという契約をした。もしAがCにお金を払わなかったならば、Cはその契約の権利を主張できない。なぜならCは契約の当事者ではないからである。例えばAとBが販売契約を結び、BはAから有名な画家の作品を購入した。そして、Bはその絵を誕生日プレゼントとしてCに贈ることも契約した。しかし、AがCに偽物を渡した場合、Cが直接Aの契約不履行を訴えることはできない。契約関係の原理によりAを訴えることができるのはBだけである。

契約関係の原理-その例外

契約関係の原理は鉄則であるため、一般の契約のほとんどに適用される。例外として、他の法律原理が優先されることで契約関係の原理が適用されない場合は非常に少ない。他の法律原理としては、以下のようなものがある。

・代理原理…BがCの代理である場合、Cはその契約の権利を主張できる。

・信託原理…BとCは信託の関係がある場合、Cは実際の権利者であるため、契約の権利を主張できる。

・担保契約の存在…CがAとBの契約について担保をしている場合、Cもその契約についての責任を負う。

・特別な法令により、契約関係の原理の適用を転覆させる場合。

このような不公平な状況を修正するために、契約関係の原理の廃止と改革を求める声が高まっている。しかしそれに対して香港特区政府は数年前に法律の専門家や学者を集め、その契約関係の原理を変更・改善するべきか否かについて検討した。しかし、現在の契約関係の原理が数百人の法律家の歴史に支えられてきているものであること、また、他の複雑な原理とのバランスを保つべきであることから改革は先延ばしとなった。下手をすると、さらなる不公平を招きかねないからである。

※注1…法律の原理(legal doctrine)とは古い法律の鉄則。法典に記載されてないことについて、裁判官により定められた法律である。多くの有名な法原理は100年間以上かけて裁判所で洗練され、改善され、権威ある法律となる。それは英国系の法律(いわゆるCommon Law)の特徴である。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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