コラム:中小企業のための法務講座『仮想通貨・暗号通貨(CRYPTOCURRENCY)の規制』

中小企業のための法務講座『仮想通貨・暗号通貨(CRYPTOCURRENCY)の規制』

中小企業のための法務講座『仮想通貨・暗号通貨(CRYPTOCURRENCY)の規制』

中小企業のための法務講座

仮想通貨・暗号通貨(cryptocurrency)の規制

 世界中で、金融テクノロジーが金融サービスを進化させ続けている。一番注目されている技術は、ブロックチェーン(Blockchain)である。簡単に言うと、ブロックチェーンとは、クラウド上にデーターを分散させ、ノード間でデーターの差異が生じた場合に他の各ノードの総意に基づき(最も信憑性が高いと判断されるデーターを多数決的に)選択することで、データーおよびデーターの信頼性を確保するネットワーク構築方式のことである。このテクノロジーは今の仮想通貨の基盤と言っても過言ではない。

2009年1月に、ブロックチェーンの技術に基づいて初めての仮想通貨であるビットコイン(Bitcoin)が発行された。当時、ビットコインとは、あるデジタルな支払い方法で、銀行という介在なしの支払決済方法である。2010年ビットコインでの買い物は、1万ビットコインで2箱のピザを購入した。

現在、ビットコインは高度な投機商品となっている。ビットコインの市場価値はおおよそ700億米ドルであり、流通するビットコイン数は1600万「個」あると思われる。

1000以上の種類があり、現在、市場価値でビットコインに継ぐ世界2番目である仮想通貨は2015年に発行されたイーサリアム(Ethereum)である。

仮想通貨はこの1〜2年で急激な成長があった。市場価値は2015年9月時点の40億米ドルから2016年9月に120億米ドルになりました。現在、全世界の仮想通貨の総市場価値は1500億米ドルがあると思われる。2017年3月以来、仮想通貨の主導者であるビットコインの市場占有率はイーサリアムの発展につれ、急激に減っている。ビットコインの市場占有率は一時80〜90%あったが、2017年9月時点で、市場占有率は50%を下回った。

仮想通貨の運営

先述の通り、ビットコインを含め仮想通貨の運営はブロックチェーン技術に依存する。要するに、取引同士間の取引の有効性、確認は永久に残る方法で記録される。ブロックチェーン技術の良い点は、取引記録がすべてデジタルフォーマットで、透明性があり共有データベースに保存され、一切の削除、弄りや修正ができないことである。

ビットコインは「採掘」というシステムの元に発行可能数は約2100万枚までです。ビットコインの価値の急激な成長につれ、投資の世界における仮想通貨の投機欲求は非常に大きい。

しかし、通貨としての機能(取引の決済手段)はまだ認められていないので、しばらくは伝統的な「お金」と代替することができないという認識である。

ICO—Initial Coin Offering

ICOとは、「大衆の資金を集め(crowdfunding)仮想通貨プラットホームを作り、このプラットホーム投資者が新発行(新種類)の仮想通貨を購入するために所有する仮想通貨(Bitcoin or altcoins)あるいは、本当の「お金」で新発行(新種類)の仮想通貨と交換すること」である。仮想通貨の可能性が莫大であると見られるため、一般大衆からの資金を集めるために多くのICO活動が発生している。2013年から20億米ドルは集まったという。

ただし、ICOという表現は、IPOと非常に似ているために人を誤解させやすいために良くないと考える。ICOとIPOは、決して同じ物ではない。例えば、ICOの場合は何の所有権(物の権利、例えば株、債券)ももらえない。彼らはブロックチェーンにてトークンが発行されるだけである。しかも、このトークンの実際価値も非常に疑問がある。

さらに、IPOと異なる点は、ICO活動はまったく規制されていない。そのため情報開示は欠けており、多くの場合、投資者は一枚の白い紙しかもらえない。法律上、ICO活動はどの法律分野であるのかすらも不明である。というのも、そもそも法定通貨(お金)ではなく、証券でもないものだからである。確かに、日本、アメリカや中国はICO活動に対して規制を定めたが、香港はまだまだである。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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