コラム:香港の仲裁に関して

香港の仲裁に関して

香港の仲裁に関して

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仲裁に関して

 民事訴訟、特に商業紛争において、正式な裁判以外の解決方法として、仲裁、調停、和解、別途の合意書/契約書などのさまざまな方法があります。今回は、「仲裁」にフォーカスしたいと思います。

 正式な裁判と異なり、仲裁はさまざまな手順が考えられます。多くのコモディティー(貴金属やエネルギーなどの商品)紛争の中で、正式な主張や書類展示が要らない一方、複雑な案件の場合、仲裁の手順は正式な裁判と変わらないような徹底的な主張、主張修正、書類提示などの手順が必要となります。

香港仲裁の現状

 香港は2011年6月1日から新しい仲裁条例(仲裁条例、香港法律、第609章)が実施され、それにより、従来の仲裁条例(1963年7月5日、香港法律、第341章)がその日から新仲裁条例に交替されることになりました。新仲裁条例の一つの大きな目的は、旧仲裁条例のように分けられた「国内仲裁」(香港境域以内)と「国際仲裁」を統一する目的があります。結果的には、香港仲裁も国際仲裁も同じの国際標準に従うこととなり、国連のModel Law of UNCITRAL(国際連合国際商取引法委員会 のモデル法)を採用することになりました。よって、香港において仲裁は国際基準(モデル法)とより緊密につながり、国際仲裁解決地として促進され、香港裁判所からの干渉も最低限まで制限することができるようになりました。

 香港は英語が通じ、公平な法律制度が整備されているため、香港が紛争解決の場所として、主導的な存在となっています。

仲裁のメリットとデメリット

 ケースバイケースですが、仲裁は以下のメリットがあるかもしれません

・スピード
・経済的
・プライバシー
・非公式
・柔軟性
・業界の経験者に紛争のことを解決してもらえる

 しかし、簡単な賃貸契約に関するトラブルから非常に複雑な建築争いなど、仲裁は幅広い紛争の中で採用されるプロセスです。そのため、簡単な案件の場合、上記のようなメリットがありますが、複雑な案件の場合、上記のメリットがなくなり、裁判所と変わらない手順がそのまま採用されます。この場合、裁判所より柔軟で素早く解決するのは不可能です。また、裁判官と裁判所の費用は納税者により賄われ、ほぼ「ただ」である一方、仲裁の場合、仲裁人と仲裁を行う場所の費用がかかりますので、裁判より高くつきます。

仲裁の性質や実態

・仲裁の基盤は、契約書当事者間の自発的な合意で、その合意は法的には有効です。つまり、いったん両者が契約書で仲裁を選んだら、片方は勝手に紛争を裁判所に持ち込むことができません。

・仲裁の準拠法(香港法、日本法、中国法)や仲裁地(香港、シンガポール、日本など)は契約当事者の合意により決めます。

・仲裁廷の裁定(award)は、ほとんどはファイナルであり、拘束力があります。法律や手続きをはっきり誤るなどの特別の場合を除き、裁定に不服でも裁判所の検討/取消はほぼあり得ません。

・仲裁廷の裁定は国内においても、国際においても、法的に認められ、実行することができます。

・香港の仲裁条例で守られないため、仲裁を選択する場合は、有効な合意は必ず書面である必要があります。

・仲裁人は、一般的には、1人あるいは3人となります。1人の場合は両方と関係ない人を選びます。3人の場合は、契約書当事者それぞれ1人と、もう一人は両者と関係ない「中立者」を選びます。

・私の経験から見ると、一般的には、別途で仲裁合意書を結ぶのはそれほど多くありません。少なくとも、契約書で一言を入れれば、仲裁地の該当の仲裁ルールは補完するでしょう。

 個別のケースで、どこの準拠法、裁判や仲裁が望ましいかは、専門家に相談することをお勧めします。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能

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