コラム:香港における民事訴訟③

香港における民事訴訟③

香港における民事訴訟③

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8 民事訴訟の流れ
 
民事訴訟の流れは以下のとおりである。
(a) 起訴状の発行 (issue of originating process)
(b) 起訴状の送達 (service of originating process)
(c) 訴答書面 (pleadings)
(d) 情報開示と交換 (discovery and exchange of documentary evidence)
(e) 証人陳述交換 (exchange of witness statement)
(f) 裁判準備の決着 (set down for trial)
(g) 正式審理(trial)
(h) 判決(judgment)
(i) 執行(execution of judgment)
(a)から(f)までの間にも様々な中間手続(interlocutory proceedings)がある。例えば、書面弁論の変更、期限の延長、欠席や簡易判決の申請、相手方の書面弁論の取消、相手方の資産の凍結、原告に対する立担保請求などで、こうした手続はいわゆるミニ(衛星)裁判である。

(a)  起訴状の発行
 民事訴訟手続規則により、裁判を開始する様式は4つある。
① 召喚状 (Writ of Summons)
この様式は事実関係と法律の争いがあるときに使用する。
② 手続開始申立書 (Originating Summons)
この様式は法律の争いがあるときのみに使用する。
③ 動議 (motion)
特別な申請である上訴、司法審査のときに使用する。
④ 嘆願書 (petition)
離婚、清算、個人破産など法律で規定された争いのときに使用する。
 民事訴訟では、召喚状で起訴することが圧倒的に多く、その理由は民間人の争いは殆ど事実関係の係争であるからだろう。例えば、契約違反の争いで、いつ、何処、何、誰、損害額などは殆ど事実関係の範囲であり、民事訴訟手続規則により、間違った様式で始まった裁判の有効性は認められるが、恐らく裁判所に様式変更を命じられる。この時、担当弁護士が恥をかくだけではなく、関連する費用も自己負担を命じられる可能性が高い。

(b)  起訴状の送達
 民事訴訟手続は、召喚状の提出およびこれを被告に送達することにより開始する。送達方法や有効性については詳細な規則が設けられており、このステップは極めて重要で、おろそかに出来ない。なぜならば、仮に欠席判決(default judgment)により勝訴した場合、相手方から送達が規則に違反していたことを指摘されると、送達の瑕疵という理由だけでその判決が覆される可能性が十分にあるからだ。

(i) 管轄区内(香港国内)の送達 (Service within jurisdiction)
個人への送達手段として以下の方法が認められる。
①手渡し
 相手方が書類受取を拒否した場合であっても、その送達は有効であると認められる。要件は、書類の性質を相手方に説明したことと相手の近くに書類を置くことである。
②書留郵送
これは最も頻繁に使用される手段である。原告は被告が常に居住している住所あるいは、最後に分かっている住所(last known address)へ書留郵送する。原告が、被告がその住所にいないことを知っていた場合(例えば、手紙が返送されていた場合)は、その送達は無効である。 
③郵便受けに投函
 もし常に居住している住所や最後に分かっている住所に郵便受けがあれば、その郵便受けに投函するのは有効な送達として認められる。しかし、先ほどと同様で、もし原告は、被告がその住所にいないことを知っている場合、その送達は無効である。
②と③については、被告が書類送達の時点で香港にいることが有効な送達の要件となる。
法人への送達手段として以下の方法が認められる。
①書留で法人の登記住所に郵送 
②登記住所の郵便受けに投函
③会社の代表取締役、社長、取締役、カンパニーセクレタリーや他の従業員
に書類の説明をし、近くに置く     

(ii) 管轄区外(香港国外)の送達 (Service outside jurisdiction)
香港管轄区外の人を訴える場合は、原告は事前に裁判所の許可を取る必要があり、これは『11番命令(order eleven)』と言われ、管轄区外の送達手続に関する規律である。原則として、原告は以下に該当することを裁判所に証明する必要がある。
① 該当案件が11番命令に規定された事項に該当し、かつ、議論する余地がある。(a good arguable case) *註1
② 裁判所に判断させる 重要な事実上、法律上の問題点がある。
③ 該当係争にとって香港は適切な裁判地である。

註1
11番命令に規定された事項は十数個あるが、重要なもののみ取り上げる。
(1)被告個人の本籍地あるいは彼の主な居住地が香港である。
(2)被告人の香港でのある行為または不行為への差止命令の申請。
(3)同時被告である他の香港在住被告に正式に送達させた。
(4)契約関係の争いの場合、その該当契約は
— 香港国内で結ばれた。または、
— 香港にいる代行者を通じて結ばれた。または、
— 契約の条文あるいは含意で、準拠法は香港法である。または、
— 契約の条文にはっきりと香港裁判所で係争する権利があることを明示した。
(5)契約の締結地を問わず、該当契約違反した場所が香港である。
(6)不法行為の場合は、該当損害の由来が香港国内で起因したことによる。

ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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アンディチェン

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