column:中小企業のための法務講座『香港の仲裁(2)』

中小企業のための法務講座『香港の仲裁(2)』

中小企業のための法務講座『香港の仲裁(2)』

中小企業のための法務講座
香港の仲裁(2)

4 香港仲裁の現状
 香港は2011年6月1日から新しい仲裁条例(仲裁条例、香港法律、第609章)が実施され、従来の仲裁条例(1963年7月5日、香港法律、第341章)が同日から新仲裁条例に交替されることになりました。新仲裁条例の一つの大きな目的は、旧仲裁条例のように分けられた「国内仲裁」(香港境域以内)と「国際仲裁」を統一する目的があります。結果的には、香港仲裁も国際仲裁も同じの国際標準に従うこととなり、国連のModel Law of UNCITRAL(国際連合国際商取引法委員会 のモデル法)を採用することになりました。従い、香港において仲裁は国際基準(モデル法)とより緊密に繋がり、国際仲裁解決地として促進され、香港裁判所からの干渉も最低限まで制限することができるようになりました。

5 香港での仲裁利点
—アジアで最も定着した仲裁地であること。

—一国二制度の元、英国同様にコモンロー制度を維持し、法の透明性があり、法に携わる人間の汚職がないこと。

—外弁登録をした弁護士も多く、欧米の名だたる法律事務所が香港に拠点を持ち、豊富な法律関係者が多数いること。

—英語が通じること。
—世界一流の仲裁センターがあること。HKIAC, ICCなど。
—地理的に日本・中国に近く、香港国際仲裁センターは、中国関連の紛争経験も多く実績がある。
—香港における仲裁判断は、最高人民法院と香港政府間の取り決めにより中国において執行が認められていること。

6 中国とのビジネス
 中国の裁判、特に地方では、未だに地元保護主義が残り、不公平な判決となることがありえます。また裁判官は、現在は弁護士同様の全国統一司法試験に合格しなければ裁判官になることができなくなりましたが、以前は、人民解放軍の退役軍人などが裁判官に任官することが少なくなく、判決の質に疑念があります。そのため、日本や第三国の仲裁を選択した場合、歴史と国際的にも評判名高い仲裁機関である香港のHKIACやシンガポールのSIACが選択されています。日系企業は、裁判管轄地として自国である日本を選びやすい傾向にありますが、日本の裁判所の判決は中国では執行できないため、香港を仲裁地として考えるのも一案です。

 最高人民法院は香港での仲裁判断の中国裁判所における執行に関する通知を配布し、香港における仲裁機関による 仲裁判断を中国国内において承認・執行が可能であることを明確化しているため、香港での仲裁判決を中国で執行することが可能です。そのため、多くの香港企業は中国とのビジネス紛争解決地として香港を仲裁地としているのが現状です。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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