コラム:香港ポストコラム『逮捕された時、するべきこと』

香港ポストコラム『逮捕された時、するべきこと』

香港ポストコラム『逮捕された時、するべきこと』


中小企業のための法務講座

逮捕された時、するべきこと

 あなたは、自分は犯罪を犯さないので、自分には全然関係ない話と思われますか。『それでもボクはやってない』という痴漢冤罪の邦画がありましたが、それに近いことがあなたにいつ起こり得てもおかしくないと、香港で弁護士をしていて感じています。

 まずこのコラムを読んだあなたは、これだけは覚えておいてください。万が一、万が一、逮捕された場合は、すぐにでも弁護士に連絡するべきです。これは私が弁護士だから言っているのではなく、そうするのがあなたにとって本当に得策なのです。

 私のこれまでの経験では、

—自分は本当にその罪を犯していないので警察はきちんと調べたらきっと分かってくれるはずだ。と勝手に考えた。
—全て日本の基準で考えた。
—初めての事で、怒りや怯えにより逮捕された事実が受け入れられない。
—自分なりの方法で解決できると考えた。
—日本人のために、海外である香港での刑事起訴の重さをそこまで実感していなかった。

 などで、最初の段階で弁護士に依頼しなかったケースを見聞きします。

早めに弁護士に依頼する事の重要性

 警官から、万が一、「逮捕する。」という言葉を聞いたら、すぐにでも警官に弁護士を依頼したい旨伝えるべきです。弁護士が事情聴取時に在籍すると、警官の態度も違いますし、慣れない環境の中、自分の味方ができることで少しは落ち着いて対応できます。

 また証拠のレベルによっては、弁護士の働きかけにより、起訴にならずに済むケースもあります。

 また起訴された場合であっても、起訴内容(charge)や事件の事実関係概要(Summary of facts or facts of the case)を早い段階で入手可能です。

 同様に、被害者証言、証人証言、政府ラボのテスト結果(例えば麻薬事件)、指紋やDNA鑑定、写真、防犯カメラの画像や検察側が起訴において使用するつもりがないが、被告にとっては役立つ資材などの起訴の証拠書類を早く入手することができます。もちろん常習犯で慣れている人は違うかもしれませんが(笑)、普通の人はまずこれらの証拠を弁護士経由でなければ自分で入手できないでしょう。検察や警察はなかなか対応してくれません。証拠書類などの全ての資材を検討しなければ弁護士は適切なアドバイスができません。そういう意味でも、最初の段階から事件に立ち会っていることでよりベストなアドバイスが可能です。また、事件の資材を見てからでないと、罪を認めるかどうかも判断できないと思います。

 更に、今まで一般的には認められていた、罪をどの段階であれ認めると刑期を三分の一減らしてもらえていたのですが、2016年9月2日の上訴法廷(Court of Appeal)で、予備審問(Mention)の段階で認めると三分の一刑期が短くなるが後の段階になってから認めれば認めるほど刑期の短縮がなくなるという判決が出ました。この判決により、更に、事件の資材を早く集める重要性が出てきました。


香港の刑事裁判所

 事件の重さにより起訴(prosecute)される場所も異なります。

Magistrates’ Court (裁判法院): 比較的軽い犯罪(2年間までの懲役)を取り扱う刑事裁判所です。

District Court (地方法院):2年間〜7年間の懲役になりそうな犯罪を取り扱う裁判所です。

Court of First Instance of High Court (高等法院原訟法廷):重大犯罪(例えば、殺人)を取り扱う裁判所です。ここは陪審員制度により裁判が行われます。

 何れにしても、万が一、逮捕されたら弁護士に依頼することだけは覚えておいて下さい。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG

弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能

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